Gemini研修

ITリテラシー格差を埋めるGemini研修|職種別事例つき

公開日:2026.08.02

ITリテラシー格差を埋めるGemini研修|職種別事例つき

「AIに詳しい若手だけが使いこなして、他の社員は置いていかれるのではないか」。全社でGeminiを展開する際、そんな不安を抱えていませんか。一部の社員だけが使える状態では、会社全体の業務効率化にはつながりません。

この記事では、ITが得意でないベテラン社員や現場スタッフも含めて全員が使えるようになる研修の設計を解説します。営業・総務・人事・マーケなど職種別に、そのままコピーして使えるプロンプト例も掲載しました。結論から言えば、格差を埋める鍵は教える量ではなく、「自分の仕事で使える型を1つ渡すこと」です。

なお、研修の費用や選び方はGemini企業研修とは?費用相場・助成金と失敗しない選び方、カリキュラムの時間配分はGemini研修のカリキュラム例で解説しています。

リテラシー格差の実態

社内のスキル差は、担当者の感覚ではなく統計にもはっきり表れています。世代間では3倍以上の開きがあり、放置すれば差はさらに広がります。

年代で3倍以上の開き

総務省『令和7年版 情報通信白書』のデータ集によると、テキスト生成AIサービス(ChatGPT、Geminiなど)を「使っている(過去使ったことがある)」と答えた国内の割合は、年代別で次のとおりです。

年代利用経験がある割合
20代42.7%
30代20.9%
40代24.3%
50代18.9%
60代13.1%

20代と60代では3.2倍の差があります。しかも30代から50代は約20%前後で横並びです。つまり「若手か、それ以外か」という構図が実際に起きています。

この状態で全社員に同じ研修を実施すると、何が起きるでしょうか。20代は退屈し、50代以上は最初の10分で脱落します。格差を前提にしない研修は、格差を広げます。

放置するとどうなるか

同白書では、個人が生成AIを利用しない理由として「使い方がわからない」「必要性や有用性がわからない」が挙げられています。企業側の調査でも、導入時の課題の第1位は「適切な活用方法が分からない」ことでした。

つまり、使っていない社員は能力が低いのではなく、自分の仕事との接点を見つけられていないだけです。ここを放置すると、次の3つが起こります。

  1. 業務が属人化する:一部の社員だけが速くなり、仕事が偏る
  2. 効果が全社に出ない:数人の時短では、経営に報告できる数字になりません
  3. 心理的な溝ができる:「使える人/使えない人」というラベルが社内に生まれます

3つ目は特に厄介です。一度そのラベルがつくと、質問しづらくなり、差はさらに開きます。

初心者がつまずく理由

ITが得意でない社員がGeminiを使わない理由は、能力ではありません。研修現場で観察できるつまずきは、次の3つに集約されます。

つまずき実際に起きていること研修での外し方
言葉の壁プロンプト、生成、ハルシネーションなど用語で止まる用語を使わず「指示文」「下書き」と言い換える
失敗の恐れ間違った使い方をして怒られたくない入力してよい情報を先に配る
他人事の壁自分の仕事には関係ないと思っている自部門の実物を教材にする

とくに言葉の壁は軽視されがちです。講師が無意識に使う「プロンプトエンジニアリング」という一語で、聞く気が失われることがあります。研修資料からカタカナ語を削るだけで、理解度は変わります。

3つ目の他人事の壁を壊す方法が、後ほど紹介する職種別の事例です。「経理の私でも使える」と分かった瞬間に、初めて自分の話になります。

用語の言い換え表

言葉の壁を外す最も簡単な方法は、研修資料からカタカナ語を消すことです。実務で使われる言葉に置き換えるだけで、初心者の理解度は変わります。

よく使われる語言い換え補足
プロンプト指示文「AIへのお願いの文章」でも可
プロンプトエンジニアリング指示の書き方の工夫技術用語に聞こえるため要注意
生成する下書きを作る「作らせる」より「頼む」が伝わりやすい
ハルシネーション事実と違う内容が混ざること現象名より起きることを説明する
ファインチューニングAIに自社の情報を覚えさせること全社員向けでは触れなくてよい
トークン文章の長さの単位初回は説明を省略してよい
ユースケース使いどころ資料の見出しでも言い換える
リテラシー使いこなす力社内文書では「習熟度」も可

言い換えのルールは、講師だけでなく社内の推進担当と資料作成者にも共有してください。研修では平易な言葉で説明されたのに、後から届く社内通知が専門用語だらけでは元に戻ります。

全員が使える研修の条件

ITが得意でない社員も含めて全員が使える研修には、共通の条件が5つあります。研修会社に依頼する場合は、この5点を要件として伝えてください。

  1. 前提知識を求めない:プログラミングの知識や専門用語の理解を前提にしない
  2. その場で1つ成功する:説明を聞くだけで終わらせず、90分以内に成果物を1つ作る
  3. テンプレートを配る:ゼロから書かせない。穴埋めできる形の指示文を配る
  4. 職種別に題材を変える:全社共通の教材は、全員にとって他人事になります
  5. 少人数で手を止めた人を拾う:講師1人あたり15〜20名を上限にする

このうち3つ目のテンプレート配布が、格差解消への効果が最も大きい要素です。初心者にとって、白紙の入力欄ほど難しいものはありません。穴埋め形式にするだけで、初日から成果物が出ます。

4つ目についても補足します。前職で企業の担当者と話す中で実感したのは、業種や役職が変われば、有効な活用方法もまったく変わるということでした。同じ「生成AIの活用」という言葉でも、相手によって必要としているものが違います。全社共通の教材が誰にとっても他人事になりやすいのは、この差を吸収できないためです。

職種別の活用事例集

ここからは、職種ごとに「毎日発生する業務」と「そのままコピーして使える指示文」を紹介します。角括弧の部分を自分の情報に置き換えるだけで使えます。研修の演習教材としても、社内配布用のテンプレート集としても活用してください。

営業部門

営業部門で効果が出やすいのは、次の3業務です。

なかでも商談メモの整理は、営業がもっとも時間を取られる作業です。移動中のメモをそのまま貼り付けるところから始められます。

あなたは法人営業の先輩社員です。以下の商談メモを読み、①お客様の課題 ②予算と時期に関する情報 ③次回までにこちらが用意するもの の3点に整理してください。書かれていない項目は「記載なし」としてください。そのうえで、次回提案の構成案を見出し3つで作成してください。 【商談メモ】[ここにメモを貼り付け]

総務・庶務部門

総務・庶務では、社内向けの文書作成と問い合わせ対応が中心になります。

社内通知文の作成は、体裁を整える時間が意外とかかります。過去の文面を一緒に渡すと、社内のトーンに合った文章が出ます。

以下の内容で社内向けのお知らせ文を作成してください。宛先は全社員、文字数は300字程度、丁寧だが堅すぎない文体でお願いします。最後に、問い合わせ先として[部署名]を記載してください。 【伝えたいこと】[日時・場所・対象者・依頼事項を箇条書きで]

人事部門

人事部門は、文章を書く場面が多いため効果が出やすい職種です。

なかでも求人票の草案づくりは、書き出しに時間がかかる代表例です。募集要項の箇条書きから、応募者向けの文章に整えます。

採用担当者として、以下の条件で求人票の本文を作成してください。「仕事内容」「1日の流れ」「求める人物像」の3項目に分け、専門用語には短い説明を添えてください。誇張した表現や、根拠のない魅力づけは避けてください。 【条件】職種:[ ]/雇用形態:[ ]/勤務地:[ ]/主な業務:[ ]/必須経験:[ ]

マーケティング部門

マーケティングでは、大量のテキストを扱う業務から着手します。

アンケートの自由記述やSNSのコメントを分類する作業は、手作業だと数時間かかります。分類の粒度を指定するのがコツです。

以下の自由記述コメントを読み、内容を5つ以内のカテゴリに分類してください。出力は「カテゴリ名/件数/代表的なコメント1件」の表にしてください。どれにも当てはまらないものは「その他」にまとめ、件数の多い順に並べてください。 【コメント】[ここに貼り付け]

経理・経営管理部門

経理は「AIは使えない部署」と思われがちですが、定型作業との相性は良好です。

なかでも数式づくりは、初心者が最も効果を実感しやすい業務です。スプレッドシートの関数を覚える必要がありません。

Googleスプレッドシートで使う数式を作成してください。A列に日付、B列に部門名、C列に金額が入っています。指定した部門の、指定した月の合計金額を求める数式を教えてください。数式のあとに、各項目が何を指すかを1行ずつ説明してください。

現場・店舗部門

現場・店舗は、パソコンに向かう時間が短い分、書類作成の負担が重くのしかかります。

報告書の作成は、現場でもっとも負担になりやすい業務です。話し言葉のメモから、提出できる形に整えます。

以下のメモをもとに、日報を作成してください。「本日の作業内容」「発生した問題」「明日の予定」の3項目に整理し、常体(である調)で簡潔にまとめてください。メモにない内容は追加しないでください。 【メモ】[口語のままで可]

いずれの職種でも、演習の前後で所要時間を計測してください。「30分かかっていた作業が5分になった」という数字が、次の受講者を動かします。

置いていかない運営の工夫

カリキュラムが同じでも、当日の運営次第で脱落者の数は変わります。効果が大きい工夫は次の5つです。

工夫具体的なやり方狙い
事前アンケート3問だけ聞く(使用経験・不安・時間を取られている業務)当日の題材を実態に合わせる
ペア演習2人1組で、片方が操作・片方が横で確認手が止まった人をその場で拾う
サポート役の配置受講者15〜20名につき1名講師が前に立ったまま進行できる
画面の同時投影講師の画面を常時映しておく遅れた人が追いつける
録画と手順書当日の録画と1枚の手順書を配布欠席者と復習者を救う

もっとも効果が大きいのはペア演習です。初心者は「こんなことを聞いてよいのか」と迷って手を止めます。隣に人がいるだけで、その迷いが消えます。

なお、ペアは同じ職種同士ではなく、使用経験のある人とない人を組ませてください。教える側の理解も深まります。

事前アンケートは、次の3問で十分です。設問を増やすと回答率が下がります。

  1. Geminiや他の生成AIを業務で使ったことがありますか(ある/少しある/ない)
  2. いま最も時間を取られていて、面倒だと感じる作業を1つ書いてください
  3. 使ううえで不安なことがあれば教えてください(自由記述)

2問目の回答が、そのまま当日の演習題材になります。回答をカテゴリごとに集計し、多い順に3つを演習に採用してください。参加者は自分が書いた作業が題材になった時点で、他人事ではなくなります。

ベテラン社員への伝え方

ITが得意でないベテラン社員に対して、若手と同じ説明の仕方をしても届きません。伝え方には3つのコツがあります。

  1. 「覚える」ではなく「任せる」と伝える:新しい操作の習得ではなく、下書きを人に頼む感覚だと説明します
  2. これまでの仕事を否定しない:「今までのやり方は非効率だった」という前提で話さないでください
  3. 業務の言葉で話す:「プロンプト」ではなく「指示文」、「生成」ではなく「下書きを作る」と言い換えます

ベテラン社員が持っている業務知識は、実はAI活用と相性が良い資産です。何が正しい出力かを判断できるのは、業務に詳しい人だからです。この点を最初に伝えると、受け止め方が変わります。

逆に避けたいのが、若手だけを推進役に任命することです。相談しづらい空気が生まれます。各部門の推進役は、業務に詳しく相談されやすい人から選んでください。

格差を広げない3か月

研修当日に差が縮まっても、その後の運用がなければ元に戻ります。3か月の運用で、次の3点を回してください。

時期やること目的
1か月目テンプレート集を配布し、週1回の質問時間を設ける初心者が聞ける場をつくる
2か月目部門ごとに「うまくいった例」を1件ずつ共有する他人事から自分事に変える
3か月目利用状況を確認し、未利用者へ個別にフォローする脱落者を早期に見つける

3か月目の確認では、未利用の社員を責めないことが重要です。使っていない理由の多くは「自分の業務での使い道が分からない」ことです。追加研修ではなく、その人の業務を一緒に1つ選ぶだけで解決する場合があります。

利用状況は、Google Workspaceの管理コンソールで確認できます。部門別に見て、特定の部門だけ低い場合は、教えた題材がその部門の業務に合っていないと考えてください。

まとめ

全員がついてこられるかどうかは、社員のスキルではなく研修の設計で決まります。

よくある質問

パソコンが苦手な社員でも受講できますか?

受講できます。Geminiの操作は、検索窓に日本語を入力する作業とほとんど変わりません。プログラミングの知識も不要です。ただし、キーボード入力に時間がかかる方が多い場合は、ペア演習を取り入れて操作役と確認役を分ける運営をおすすめします。

若手とベテランで研修を分けるべきですか?

年齢では分けないでください。分けるのは職種と、実際の使用経験です。年齢で分けると「できない人の組」という空気が生まれます。使用経験のある人とない人を同じ回に入れ、ペアで組ませる方が定着します。

職種別の研修は費用が高くなりませんか?

全社員向けの基礎部分を共通化し、演習の題材だけを職種別に差し替える設計であれば、費用は大きく変わりません。教材をゼロから職種別に作り直す提案になっている場合は、共通部分の切り分けを依頼してください。

テンプレートを配るだけでは身につかないのでは?

テンプレートは入口です。最初の成功体験をつくるために配り、そのうえで「なぜこの指示文だと精度が上がるのか」を演習で扱います。白紙から書かせる研修は、初心者の脱落率が高くなります。

何人くらいの規模で実施するのが適切ですか?

1回あたり15〜20名が目安です。これを超える場合は、サポート役を1名追加してください。オンラインの場合も同様で、手が止まった人を検知できる人数が上限になります。

自社の業務でGeminiを使いこなしたい方へ

鶴屋では、貴社の実業務を教材にしたGemini研修と、定着までの伴走支援をご提供しています。「まず話を聞きたい」だけでも歓迎です。

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出典

  1. 総務省『令和7年版 情報通信白書』データ集「各生成AIサービスの利用経験(国内、年代別)」
  2. 総務省『令和7年版 情報通信白書』個人におけるAI利用の現状
  3. 総務省『令和7年版 情報通信白書』企業におけるAI利用の現状
  4. Google Workspace ラーニング センター「Gemini のプロンプトの記述に関するヒント」
  5. Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」

執筆者

鶴田 基文(つるた もとふみ)/AI活用パートナー

AI関連企業の営業として、中堅・大企業のマーケティング部門に対する生成AI活用の提案に従事。現場の「何に活用できるのか分からない」という声を数多く聞いてきました。現在は企業向けのGemini研修・活用支援を専門とし、Google Workspaceを前提に、研修の実施だけでなく、入力ルールの整備や定着状況の測定、Google Workspace Studioによる自動化までを一貫して支援しています。